1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「秋空くん、これは事前投資だ」

「事前投資!?…ですか」

「あぁ、秋空くんになら、よもを任せてもいいと思っている」

 神野くんは急に言葉を詰まらせ、下を向いてしまいました。

「俺は、身元はっきりしていないのに」

「それ、私の前で言います?私、神野くんより深刻な身元不明者ですよ」

「よも、お前は俺の娘だ」

「…うん」

 お父さん反応速くてびっくりですよ。

 咳ばらいをしたお父さんは、神野くんが返そうとしたピアスを、神野くんの手に持たせました。

「だから、受け取れ。よもを守る自信がないなら、返してもらってもいいが?」

「ッ…。分かりました。ありがとうございます」

「あぁ。…よも、それよく見てみろ」

「え?」

 よく見ろとはピアスをですか。じっと見てみます。

 …あ、よく見ると中に桜が見えます。宝石の中に描かれているみたいです。
 なんだかきれいですね。
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