1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
驚いたままの私に、神野くんは手を差し伸べてくれました。
う、いくらなんでも手を繋ぐのは恥ずかしいので、なんとなく裾を掴んだら思いっきり苦笑いされてしまいました。
でも、そのまま歩き出したのでいいみたいです。
「晴野、昨日来てた人は?」
「泊まって行きましたよ。朝リビングで屍になっていらっしゃいました」
「…俺、ぜってぇその人と飲みたくねぇ」
「神野くん飲んだことあるんですか?」
「…ないと言えば嘘になる」
「未成年は飲酒禁止ですよ?」
たわいない会話をしながら登校です。こんな登校をするのは中学ぶりで新鮮ですね。
神野くんの制服の裾を掴んでいた手はいつの間にか、神野くんの手を繋がれていて、あったかいです。
こんなふうに手を繋ぐのも智希と望亜くらいだからなんだかくすぐったい気分ですね。