1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 神野くんは笑わせる話をしてくれて、楽しく登校できます。
 そのおかげでいつもの道のりが早く感じられます。

 そう言えば、周りの視線がいつもより気になりませんでした。

 気づけばもう学校です。早いですね…。

「ねぇ、なにあれ」

「ブスが見せつけて何様?」

 不意に耳に飛び込んできた言葉。

 さっと視線を動かせば、こちらを睨んでくる女子生徒が2人。
 見たことがないということは他のクラスか、上級生でしょうか…。

 過去の記憶が押し寄せてくる。

 …怖い、またあんな風になったら…。

「晴野」

「ッ…神野くん?」

 離しかけた手を、神野くんが引き留めてくれました。

 少し痛いくらいに握られた手。神野くんはまっすぐに私を見つめてきました。

「大丈夫だから。…表だけ着飾った奴の方が、よっぽどブスだろ。本性隠せてねぇしな」

「ちょ…神野くん!?」

 思いっきり大音量の悪口ですよ。ついでに言った2人を思いっきり睨みつけてますね。

 というより、神野くんにも聞こえていたようですね。

 神野くんに睨まれた2人はそそくさと立ち去ってきました。神野くんすごいです…。
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