1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…言わせておけば、ねぇ、こいつ好きにしていいよ!」

 女子生徒のその言葉に、後ろに控えていた男子たちが前に出てくる。
 その表情と過去の映像が一致する。そう認識した途端、顔から血の気が去ったのが分かった。

 この人たち、自分の欲求を満たすためなら相手が誰でもいいんだ。

 そんな人たちの人形になんか、なりたくない!

「来ないで」

「おとなしくしてろよ、晴野サン。顔はいいんだから、あんま傷つけたくねぇからさ」

「ふざけないで!!あんたたちの好きになんかならないから!!」

「あ~、俺さ、キャンキャン騒ぐ奴嫌いなんだよねぇ。キスできないのは残念だけど、その口から塞ごうか」

 にやりと笑った男子の顔が気持ち悪い。
 自分だって醜態をさらすというのに、この人たち頭いかれてる。

 まぁ、街を歩き回ってやってるだけのことはあるか…。
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