1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「…晴野、神野に好意があるのか」

「え?」

「事情を説明していた時はなかったが、終わった途端、神野を庇うような発言ばかり。そうなっては、こちらも晴野の証言を信じられなくなるんだ」

「…それは」

「神野と仲良くしているのは知っている。でもな、処罰を肩代わりするのは友情か?晴野はもっと冷静に物事を見られる子だろ?」

 公庄先生の言う通りなのかもしれない。

 でも、いじめられそうになった時、神野くんは1番に私を助けてくれた。神野くんがいなかったら、私は絶対にいじめられてた。

 初めてお父さんや嵐鬼のことを抜いて、私だけを見てくれる友達に出会えた。
 そんな友達を庇いたいって思うのは、いけないことなんですか…?

 何も言えなくなった私の頭上で話は進んでいく。

 このまま、神野くんに処分が下るのかな…。
 もし、それが決まったら保護者が呼び出されて同席での指導になる。
 もし、もしそうなったら神野くんはどうなるの?
 施設長が呼ばれでもしたら、最悪の形で再会してしまう。

 そんなの、嫌です…。
< 293 / 313 >

この作品をシェア

pagetop