1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「神野、指導が終わったら即刻帰宅だろ」

「公庄先生」

「げ」

 生物室から遅れて出て来た公庄先生は、私の隣に居る神野くんを見るとため息交じりに言います。

 神野くんはあからさまに表情を歪めちゃってますね。

「最終日とはいえ、謹慎中だろう。すぐに帰宅しなさいと言われなかったのか」

「別にいいだろ?晴野送ってこうとしただけだし」

「まぁ、最近は暗くなるのが早いからな。…晴野、ちゃんと送ってもらえ」

「あ、はい…」

「ところで神野。晴野を選ぶのはいいが、絶対に今回みたいなことはもう起こすなよ」

「…なんで公庄にそんなこと言われなきゃいけんぇんだよ」

「神野くん、先生つけてください」

 なんでケンカ腰なんですか。あと、公庄先生も…。

「神野くんが私を選ぶってなんですか?」

「「…」」

 あれれ、公庄先生に聞いたつもりが、神野くんにまで遠い視線を…なぜですか?
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