1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「神野、まぁがんばれ」

「…晴野ってホント天然だよな。情報屋の時は…ッ!?」

 神野くんは言いかけた言葉を慌てて止めました。
 その表情は口が滑ったと言わんばかりで、公庄先生の耳にしっかり届いてしまっています。

 神野くんは悪いというように私を見てきています。

 …あ、そう言えば…。

「神野、なんでお前が晴野の正体を知ってる」

「は?…なんで公庄が、晴野が情報屋だって知ってんだよ!」

 神野くんに言うの忘れてました。学校での情報提供者は公庄先生だということを…。

 せっかく落ち着いたと思った空気がまた張りつめます。早く言わなければですね。

「公庄先生、神野くんは情報屋の仲間です」

「え?」

「神野くん、公庄先生は学校関係者の中での情報提供者なんです」

「は…?」

「ごめんなさい。すっかり言うの忘れてました…」

 公庄先生と神野くんはしばらく呆然とした後、大きなため息を吐きました。

 公庄先生はその後、神野くんに何かを言って、私たちを送り出してくれました。
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