1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「晴野、お前勉強できる?」
まだ話しかけてくるんですか。先生のお話聞き逃しちゃいます。なので、聞こえないふりで応戦です。
「晴野、聞けよ」
いやいや、今は先生の話以上に大事なものなどありません。
「はれの」
わざと間違えないでください。
あう、先生字が達筆すぎて読めません…。何とか音の情報で…。
ガタンと音がする。と同時に、机にわずかな振動。横を見れば…おおう!?
「神野くん?」
「教科書忘れた」
左様ですか。ではまず教科書忘れたから見せろなり言ってください。
なぜか机をくっつけられてしまいました。授業はつつがなく進みます。
「晴野、お前ガリ勉?」
「ノート忘れた。1枚くれ」
「晴野」
さっきからうるさいですね!おじいちゃんの声は聞こえにくいんですよ!!
「授業中は話しかけないでください」
「あ、真面目ちゃんか」
神野くんは少しつまらなさそうにすると、案外素直に聞いてくれて話しかけてこなくなりました。
でも、机はくっつけたままで、授業を聞いている風ではないですね。
そんなこんなで授業は終了。ノートをパタンと閉じた頃には先生退出。速いです。