1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
不意に耳に飛び込んできたチャイムの音。
いけない。すっかりぼうっとしていました。それでも、ノートはちゃんと書いてあったのでいいや。なんだか疲れちゃいました。
「晴野、帰りどっち」
「…私に構わないで」
「嫌だと言ったら?」
「…」
荷物をまとめ、教室を出ます。後を神野くんが付いてきますが、放っておきましょう。
どうせ、神野くんとはただのお隣さんなのです。
「え?」
行きついた先は職員室。神野くんは戸惑っていますが知りません。
「公庄先生、いらっしゃいますか」
「あぁ、晴野か。応接間に行こう」
「はい」
「え、おい晴野」
「ついて来ないで。もう、うんざりです」
引き留めようとする神野くんの手を振り払い、私は公庄先生が待つ応接間に向かいます。