1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「おせぇ」

「ッ!!?」

 今下の方から声が!?

 見れば神野くんが恨めしそうに私を見上げているではありませんか。
 なんでまだいるんですか!!

「お前のせいで先生に怒られたし」

 そんなもの知りませんよ!!

 こっそりため息をついて歩きはじめます。
 神野くんも当然のようについてきます。

 ついて来ないでいいですよ!!

 学校を出て、しばらくしても神野くんはついてきます。
 どこまで来るんですか。さっきから何も話していないせいで妙に空気が張っています。

 それより、今日は施設に行くと決めていたのに神野くんがいては行けないではないですか!!

「晴野、何で怒ってんの」

 いきなりかけてきた言葉がそれですか。

 周りに誰もいません。よし。

「怒ってません」

「怒ってんだろ。そんなに俺が嫌なのか」

「嫌です。分かってるならついて来ないでください。迷惑です。私は静かに3年間過ごしたいんです」

 足を止め、一気に言ってやりました。神野くんは眉を顰め、私を睨んでいるかのよう。

 あなたに睨まれた覚えはありません。大体、睨みたいのはこっちですよ。

 しばらく、無言の睨み合いが続く。神野くんは一歩も譲りません。私だって譲りません!


< 63 / 313 >

この作品をシェア

pagetop