1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「晴野、弟?」

 あ、いるの忘れていました。神野くんは思いっきり唖然しています。
 私に抱きつく智希を信じられないと言ったような目で見ています。

「よも、クラスメイト?」

「…一応」

「一応ってなんだよ。神野秋空です。晴野の隣の席で」

「そうなの。でも、蓬はあんまり男の子苦手なの。こうやって一緒に帰ってくるのも、控えてくれないかな」

 お母さんは私のこと、やっぱりわかっていてくれます。
 神野くんは急に気まずそうな顔をしましたが、お母さんの言葉の通りなので何も言いません。

「ねーね、なんでメガネ?」

「あ、ともくん!?」

 油断してました!メガネとられちゃいました。
 ついでに前髪も耳にかけられてしまっています。

 お陰様でよく周りが見えるってダメですよ!お隣には神野くんがッ

 チラッと神野くんを見たつもりが、ばっちりと視線が合ってしまいました。


 オーマイガーなのです。


 ですが、神野くんは急に顔を背けました。…そんなに私の顔は不細工でしたか。


「…晴野、また明日」

「はぁ…」


 急にどうしたんでしょうね。神野くんは顔を隠してそそくさと帰っていきました。
 その指の間から見える頬が少し赤かったのは気のせいですかね…?


< 65 / 313 >

この作品をシェア

pagetop