1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「晴野、弟?」
あ、いるの忘れていました。神野くんは思いっきり唖然しています。
私に抱きつく智希を信じられないと言ったような目で見ています。
「よも、クラスメイト?」
「…一応」
「一応ってなんだよ。神野秋空です。晴野の隣の席で」
「そうなの。でも、蓬はあんまり男の子苦手なの。こうやって一緒に帰ってくるのも、控えてくれないかな」
お母さんは私のこと、やっぱりわかっていてくれます。
神野くんは急に気まずそうな顔をしましたが、お母さんの言葉の通りなので何も言いません。
「ねーね、なんでメガネ?」
「あ、ともくん!?」
油断してました!メガネとられちゃいました。
ついでに前髪も耳にかけられてしまっています。
お陰様でよく周りが見えるってダメですよ!お隣には神野くんがッ
チラッと神野くんを見たつもりが、ばっちりと視線が合ってしまいました。
オーマイガーなのです。
ですが、神野くんは急に顔を背けました。…そんなに私の顔は不細工でしたか。
「…晴野、また明日」
「はぁ…」
急にどうしたんでしょうね。神野くんは顔を隠してそそくさと帰っていきました。
その指の間から見える頬が少し赤かったのは気のせいですかね…?