1人ぼっちと1匹オオカミ(上)
「よも、大丈夫?」
「うん。ありがとお母さん」
「あんまりしつこかったら、席変えてもらうなりしなさいね。無理しなくていいから」
よしよしと頭を撫でてもらいます。
やっぱりお母さんの手はあったかいです。
「ねーね、かえろ!」
「そうだね」
「ねぇね~」
「ともくん、交代できるね」
「うん!」
今度はすんなり降りてくれました。
さっきから一生懸命手を伸ばしてくれていた望亜を抱っこして、智希とは手を繋いで歩きます。
お母さんは智希の反対の手を握って一緒に歩きます。
「よも、まだ行けてないんでしょ?」
「いったん帰ってから行きます。遭遇したらまずいですから」
「そうね。…よも」
「ん?」
「無理はしなくてもいいけど、さっきの子、悪い子には見えなかったよ?嵐鬼みたいにこっそ
り仲良しなら、出来るんじゃない?」
お母さんのまさかの言葉にびっくりです。
まさか神野くんと仲良くなるのですか。
…確かに悪い人ではないと思います。
でも、それでも、私はもう疲れちゃったんです。
黙った私に、お母さんは苦笑を浮かべて忘れていいよと笑いました。私も苦笑を浮かべます。