1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 『たいようの家』

 それが、私が情報屋としてもらった報酬を寄付している施設の名前。
 ここが初めの施設だったのです。施設長さんはいらっしゃいますかね…。

「あら、もしかして…」

 左の方から声が聞こえました。そちらに顔を向けると、いたいた施設長さんです。
 夕飯の買い出しに行っていたのか、荷物がいっぱいです。

「情報屋さん?」

『さんはいらない。それより、運ぶの手伝います』

「あら、今日は声がきれいに聞こえますね。でも、私はあなたの素の声が好きですよ」

 くすくすと笑う施設長は、もうすぐ定年を迎えられる。でも、この施設は続けていくと意気込んでいる元気な方です。

 とりあえず、荷物を半分預かって一緒に運びます。
 う、なかなか重たい…。

 なんとか台所まで運び終えると、施設長が冷たいお茶とお菓子を出してくれました。

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