1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

『帰らせてくれ』

 声が震えそうになるのを必死でこらえる。だめだ。泣いたらいくらなんでも気付かれる。

 神野くんは、少しがっかりしたようですが、あなたに構っていられるような余裕は今の私にないんです。

 神野くんの脇を通って家に急ぎます。多少、走って逃げるように見えたってかまわない。


 早く帰りたい。あの人から早く離れたいッ。


 いつの間にか家に着いていた。その頃には、フードも取れてしまっていて、肩で息をしていた。大きく息を吸い込んで吐く。

 ダメだな今日は…。人と関わり過ぎた。

 玄関のドアを開けると、リビングからパタパタと2つ分の足音。

「ねーね!!」

「ねぇね~」

「…ただいま。ともくん、みあちゃん」

「おかえり~!」

 今日は飛びついて来ないで、しっかり私が靴を脱ぐのを待ってくれました。
 家に上がると、すぐに左右の手は2人に掴まれて、洗面所まで案内してくれます。

 手を洗ってリビングに行くと、もうお父さんが帰って来ていました。

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