1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

「う…」

 最悪な夢見ですね…。

 もう忘れたいのに、なんで忘れられないんでしょうね。嫌な思い出ほどよく覚えていると言うのはあながち間違ってないと思います。


 今、何時でしょうか…。夜中の2時…。
 とりあえず水だけでも飲みたいです。お父さんたち起こさなきゃいいけど…。

 とりあえず部屋を出て、音を立てないように階段を降りる。ホッと息をはくと、なぜかリビングの明かりがついています。

 どうして…?

「よも?」

 リビングに入ると、ソファに座っていたお父さんが振り返りました。お母さんも台所に立ち、私を見つめています。

 なんでお父さんもお母さんも起きているんですか?いつも日付が変わる前には寝ているのに。

「どうして?」

「よもが泣いた日は、大体これくらいに起きてくるだろう?」

 フッと見透かしたような目で、お父さんは笑みを浮かべる。
 暗に隠し事なんか出来ないぞと言われているようで、思わず視線をそらしてしまう。

 分かってる。お父さんは私のことをしっかり分かってくれている。
 だから、情報屋もそう呼ばれるより早くお父さんは気付いていた。

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