1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

助け


 …なんとか間に合いました。

 駆け込み乗車して駅員さんに睨まれましたが、何とか間に合いました。
 よいこの皆さんはマネしてはいけません。


 さてと、切り替えなきゃ。
 ホームを出て、陰になっているところでフードを深くかぶり、ポケットに入っている変声機の電源を入れる。

 取引の約束の時間まであと10分。
 今回の依頼者は依頼内容を会って話したいとの希望でしたので、まだ何を調べるか分からない。

 今回の目印は、肩の入れ墨でしたね…。

 改札から比較的近いところに、冬も近いというのにタンクトップを着て、肩の入れ墨を強調していらっしゃる方がいました。

 うわ、寒そう…。

 それより、その彼の周りには待ち合わせらしいサラリーマンやちょっと不良っぽい学生の姿が…。

 あんなところでどう話すつもりですか。

 待ち合わせまであと5分。タンクトップの男が携帯を気にし始めた。

 やっぱりあの人が取引の相手ですね…。

 変声機の電源を入れて、少しだけ声を出して確認。
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