こえのおしごと!
はじまり
「今日から君たち3人、"Tiara"ってユニットだから、よろしく頼むね」
突然社長から告げられたその一言は、私たちに当然の驚きをくれた。
「ユニット?」
元気で快活な高校1年生、神田羽香(かんだわか)が質問した。
「そう。うちの事務所には所属者が君たち3人しかいない。それも立ち上げのために行った大々的なオーディションを勝ち抜いた若い人材。3人がそれぞれ知名度を上げたら元々ユニットを組んでもらうつもりでいたんだ」
そう。私、千鳥悠乃(ちどりゆの)と神田羽香、加えて葉月頼夏(はづきらいか)の3人は、2年前にこの声優プロダクション『EVER PRO』の旗揚げオーディションで合格した者なのだ。
所属者は私たち以外にいない。
私が高校2年生、頼夏に至っては中学3年生だ。
私たち3人は仲がいい。
その点は大丈夫だと思うのだが…。
「ユニットって何をするんですか?」
聞かなきゃだめだ!だって仕事だもの!
「CD出したりライブしたりイベントしたり…まぁ、今みんながソロでやってることを3人でもやってほしいって話かな」
聞けば、最年長の私がリーダーらしい…。
「面白そうですね」
ほわんとした癒し系ボイスが聞こえてきて、頼夏が発言したのだと気づいた。
「私は悠乃ちゃんも羽香ちゃんも大好きだから、活動するなら楽しみ」
頼夏がそう言うと、羽香が元気いっぱいな声を出した。
「だね!私も賛成!やってみたい!」
「そうね…。がんばってみましょうか」
ふたりが賛成なら反対しても無駄。
それに、反対する理由もない。
楽しそうなお仕事が増えるようで、私は楽しみでいっぱいになった。
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