未来の1/fragment
コンコン♫
病室の扉を数回ノックする音が聞こえ、看護師が病室に入って来た。
「失礼します。坂尻さん、今から検査説明をしますので」
「はい」
母親は看護師に連れられ、病室を後にした。
腕には点滴が打たれ、パジャマ姿になっていた。
夏海はベッドからゆっくり起き上がり、点滴スタンドを持ってそっと病室を出た。
病棟の廊下を手すりでつたって歩いていると、ガラス張りの窓の前で足を止め、外の景色を眺めた。
昨日の出来事が、どうしても思い出せない。
廊下を歩いていたところまでは、僅かながらも記憶に残っているが…
日差しが目に入り、キーンとする耳鳴りとめまいが起こり始め、夏海は目を閉じた。