未来の1/fragment





隣の席に座るさやかにふと視線を移すと、ノートのページをめくっていたところに夏海は思わず声をあげ、手を伸ばした。



「ダメ!」



その瞬間、さやかは人差し指をノートの切れ端でシュッと切ってしまい、傷口から血がジワジワと滲み出した。



「あっ…」



夏海は止めるのが少し遅かったが、さやかが紙で指を切る姿が数秒前に見えたのだった。



「痛った‼︎」


「紙で切ったら痛いよね…ちょっと待って、絆創膏持ってるから‼︎」



真弥はリュックのポケットから絆創膏を取り出し、さやかに渡した。



自分が声を掛けたせいで指を切ってしまったのかと思ってしまうが、そうではない。


一体、何が起こったのか分からず、両手で目を擦った。そしていつの間にか耳鳴りが止んでいた。





< 29 / 403 >

この作品をシェア

pagetop