未来の1/fragment




丸林の隣に深く腰掛けて、西岡は問いかける。



「最近はどうだ?」



この言葉の意味を理解するに、時間はかからなかった。


俺の事も含めて意味合い的には、父親の事だろうと察した。


単語帳から目を離して、遠くを見つめながら丸林は口を開く。



「何を期待しても変わりませんよ。でも俺は今の状況を打開したいんです。そして高校卒業と共に自由になりたい、ただそれだけです。その為に今自分に出来ることは、勉強しかないんで」



隣に座る西岡と視線を合わせるな否や、余裕の笑みを見せた丸林は再び単語帳を広げた。


感心していた西岡だったが、あることを思い出して、丸林の肩を叩く。



「そういえば、進路希望調査のプリント出してなかったよな?」


「あっ…」



ついにバレたかというような表情を浮かべる丸林を見て、西岡はベンチから立ち上がり両手に腰を当てて溜息をついた。



「提出物はちゃんと出せよ、いいな⁇」


「はい」





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