未来の1/fragment
丸林の方を一度振り向くが、2人とも何も声を掛けない。
普段より増して不穏な空気が漂っていて、丸林は息を呑む。
ガチャっと玄関の鍵を開ける音が扉越しに聞こえた。あの父親が帰ってきたのだ。
玄関の扉がバタンと閉まり、靴を脱いでフローリングに足を踏み入れた時だった。
リビングにいた母親と泰斗が急いで父親に駆け寄って行く。
「ねぇ、あのニュースって本当なの?どうなってるの?」
「俺、このまま学校に通っても大丈夫なのかよ⁉︎」
言い寄られる父親は何も言葉を発さず、ただ唇を噛み締めていた。
遠目でこの光景を見ていた丸林は、あの威圧的で且つ高圧的な父親がここまで追い込まれている姿を初めて目の当たりすることになった。
父親に限ってまさかと思っていたが、これで坂尻が言っていた事が確信へと変わった。
「まじかよ…」