未来の1/fragment
「嫌な予感がすると耳鳴りがして、声や音を拾ったり、不意にも他人の未来や過去が見えたり。人には気配があって、それを感じられる人がいる。
どうしても感覚的な物だから、自由に制御することは出来ない。この不思議な感覚と現象は、次第に消えて無くなっていくかもしれない」
「それで、見えた時はどうしてたんだ?」
「例え他人の未来が見えたとしても、私がその人の未来を選ぶわけにはいかないし、何しろ自分の為にこの力は使えない」
言い換えれば、自分の為に能力がより発揮されることはないのだ。
「今、丸林が人生の分岐点に差し掛かっているの。彼には二つの選択肢があって、どの道を選ぶかは彼次第。私がそれ以上の事を指図する権利はない」
夏海は立ち上がり、診断書を堀澤から取り上げて手帳に戻す。