未来の1/fragment






我に戻った夏海は、自分が右手で堀澤の腕を掴んでいたことに気付いて手を離した。



「あれだけ廊下を走るなって、また怪我でもしたら…、坂尻大丈夫だったか?」


「うん」



様子がおかしいことに気付いた堀澤は、夏海の顔を覗き込む。


「堀澤、今バレーの練習の時に怪我をした腰と膝を庇ってか、力抜いてしてるでしょ?」


「何で分かるんだよ⁉︎」


「歩いている時から片足に重心が移ってる。一度本気で練習してみてよ、大丈夫だから自分を信じて。今の状況が限界じゃないはず」


「あぁ」



半信半疑な表情を見せる堀澤を他所に、夏海はニコッと笑顔を見せて前を歩いていく。



夏海が何故笑ったのか、堀澤には分からないだろう。


それは、彼の未来は明るいものだと悟ったから。


日本代表を背中に背負い、さらにプレッシャーをものともせずに自分のプレーをしている姿が見えた。


夏海はクスッと笑い安堵したのだ。




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