未来の1/fragment
「素直に受け取れば示談成立だったのに、そこで反論するなんて、相変わらずキツイ女だよな…」
丸林は床に置いていたリュックを右肩に掛けて教室を出た。
廊下を歩き、下駄箱前でスニーカーに履き替える夏海を見つけた。
でも声を掛けることが出来ず、ただ夏海の後ろ姿を遠目で見ていた。
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学校から帰宅した丸林は、真っ白で大きな自宅を下から見上げ、溜息を一度ついた。気持ちを切り替えてから玄関を開け、リビングに立ち寄った。
「あら、お帰りなさい」
「ただいま」
キッチンで声を掛けたのは、母親ではなく家政婦さんだ。
「今日の晩御飯は何が食べたいですか?」
笑顔で語りかける家政婦さんに対して、丸林は素直に答えた。