未来の1/fragment
和泉側の背番号15番は、やや緊張気味だった。それもそのはず、試合に出場するのが久々だからだ。
「ナイスプレー井垣‼︎」
「おぅ」
背番号15番の井垣は交代する前に、監督から言われたことを思い出していた。
『体を近づけて接近戦になったらプレッシャーをかけていけ、必ず池谷は負ける』
思わず口角を上げ、不気味な笑みを浮かべた。
強豪校和泉大付属のサッカー部員として、試合に出れているという喜びと監督からの期待に応え、アピールしなければと必死になっていた。
「池谷‼︎」
顔を上げ高く舞い上がったボールを目で追い、ヘディングでクリアしてボールをキープした池谷は、そのまま前を向きドリブルをして相手ゴールへと足を進めた。
応戦席にいる夏海は両手を合わせ、祈るように目を閉じた。