未来の1/fragment
放課後になり、夏海は1人図書室をぐるぐると歩き周り、ある本を探していた。
本棚を見上げると探していた本が見つかり、精一杯背伸びをして本棚に手を伸ばすが届かない。
すると、夏海の背後から手を伸ばして本を取る者が現れた。
後ろを振り返った夏海の目の前には、本の表と裏表紙を見ている丸林の姿があった。
「こんなのに興味を持つようになったんだな」
「いいでしょ、別に」
丸林は夏海に本を手渡し、向かい側の本棚に背を付けて座り始めた。
「池谷に人生の分岐点として、2つの選択肢を自分で選ばせたのはよかったな。本人にとってプロになりたい気持ちの原動力になったと思う」
「えっ、もしかして昇降口での会話聞いてたの⁈人聞き悪い」
「あのな、たまたま居合わせて話を聞いちまったんだから、しょうがないだろ⁉︎」
夏海は思わず、丸林に向かって苦笑いを浮かべた。