ホクロ
ホクロ
彼と初めて会ったとき、彼の上唇のすぐ右上にある大きなホクロが真っ先に目に留まった。
まるでチョコレートを夢中で食べて、そこにチョコレートがついてしまったことに気づかない子どもみたいでかわいいと思った。
短大からこの四年制大学に編入した私、伊川梓紗(あずさ)は、他の人たちよりゼミが決まるのが遅く、ゼミに入ったのは3年生の冬だった。
ゼミに入ってから彼の噂は時々耳にしていた。
どうやらゼミの中ではすごい先輩らしい。
やたらに博識で物事を批判的に鋭い視点で捉えるとんでもない切れ者だとか。
ゼミの先生や同じゼミの院の先輩たちが時々彼の名前を口にしては渋い顔をしていた。
「私、富岡くん苦手だわぁ。だって富岡くんめっちゃ突っ込んでくるんだもん。学部のときの卒論発表で嫌なところ突いて質問してくるから参ったわ」
「そう言えばもうすぐ留学から帰ってくるんじゃないか」
まるでチョコレートを夢中で食べて、そこにチョコレートがついてしまったことに気づかない子どもみたいでかわいいと思った。
短大からこの四年制大学に編入した私、伊川梓紗(あずさ)は、他の人たちよりゼミが決まるのが遅く、ゼミに入ったのは3年生の冬だった。
ゼミに入ってから彼の噂は時々耳にしていた。
どうやらゼミの中ではすごい先輩らしい。
やたらに博識で物事を批判的に鋭い視点で捉えるとんでもない切れ者だとか。
ゼミの先生や同じゼミの院の先輩たちが時々彼の名前を口にしては渋い顔をしていた。
「私、富岡くん苦手だわぁ。だって富岡くんめっちゃ突っ込んでくるんだもん。学部のときの卒論発表で嫌なところ突いて質問してくるから参ったわ」
「そう言えばもうすぐ留学から帰ってくるんじゃないか」
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