ホクロ
しばし見つめ合う。

やはり彼のまっさらな表情からは何も読み取ることができなかった。


「私は富岡さんが好きです」


 私は沈黙を破ってそう言った。


なぜか吹き出しそうになってそれをこらえた。


たぶん、改めて彼への思いをはっきり言葉にしてしまって、恥ずかしさに照れてしまったのだと思う。


一瞬、彼は私から目を逸らしたかと思うと再び視線を私に戻し、身体を近づけた。


私の唇と彼の唇が重なる。


彼の温かく柔らかな唇が、私の身体をとろけさせる。


ほんの数秒間の口づけに、身体は熱を帯びる。


彼は唇を離すと運転席のシートに背を預け、長いため息をついた。


「ボクも…」

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