ホクロ
「ボクも、伊川さんのことが好きです」
 

私は予想もしていなかった言葉に耳を疑った。


「だから降りてください」


「何笑ってるんですか。早く降りてください。あまり長く停められないんで」


 彼は前を見つめたまま言い放った。そう簡単に降りるもんかと私は食い下がった。


「私と付き合ってくれますか?」


「ボクと付き合ったらきっと大変ですよ」


「覚悟の上です」


 私は彼に真剣な眼差しを送った。


「あなたはいつもずるいですね」


 彼は私の両頬を大きな両手で包み込み、また唇にキスをした。


普段の彼からは想像もできないような、熱く、濃厚な口づけだった。


唇を離すと、彼は小さなため息をついた。


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