ホクロ
私は彼の真向かいの席に座った。


「こんなところでひとり何をやってるんですか?」


「涼んでいるんです。ここしかエアコンがないので。今日は疲れました」


「そうですね~。でも楽しかったですね」


「ええ。伊川さんのスイカ割りはなかなかの見ものでしたね」


「だってみんなウソついて誘導するんですもん。目隠し取ったらスイカが私の10メートルくらい後ろにあったじゃないですか」


「10メートルは言いすぎですよ」


彼は眉尻を下げて控えめに笑った。


彼の笑う姿をあまり見たことがなかったので、これも珍しいことだと思った。


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