これは、いつかの君の話
「はぁ・・・入学式さぼっちゃたよぉ~」

口には出しているものの、内心は後悔していなかった。

あてもなく電車に乗ると学校から三駅離れた生野島駅で下車した。

生野島駅から少し歩いたところには海が見えていて、きれいに波打っていた。


海岸にはちらほらと人がいて、海の季節にはまだはやいだろうに水に触れている人もいた。



海岸あたりを歩いていると、見覚えのある後姿を見つけた。

さっきのあの男だ。


「なーにしてるんですかっ!先輩!」

私はその男の背後に回ると大声を出した。

男はわっと声を張り上げてこちらを振り返った。

「・・・だれ?」


どうやら私のことなんて覚えてないようだ。

「ひっどっ!人のこと突き飛ばしておいて忘れたの!?最低!」

私はぷいっとそっぽを向いた。

「え・・・?突き飛ばした?俺が?」


男はそのことすら頭にないのかさすがの私も頭にくる。

「突き飛ばしたでしょ!?さっき高野高校の近くで!」

うーんと悩んだ後に手を鳴らして

「さっきの!」

と、笑いをこぼした。
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