あの空を自由に飛べたなら
友情のはじまり




あれから、碧ちゃんがよく家に遊びに来るようになった。

実は同じ学校に双子の弟、信吾(しんご)が通っていて、碧ちゃんとも仲が良いらしい。

「へぇ~。じゃあ勉強とかは毎日信吾に教えてもらってたんだ?」

凛とした声で碧ちゃんが言う。

「うん…。信吾、優しいし勉強もできるから…頼れるよ」

言うと信吾が唇を尖らせて発した。

「優菜はバカだから理解力ないよね~。大変なんだからさぁ、こっちは」

今は私の部屋で、私と碧ちゃんと信吾の3人で勉強会をしている。

2年生1学期の中間テスト期間らしく、碧ちゃんと信吾はそれに倣っていた。

学校に行っていない私にとってはあまり関係のない事柄ではあったが、いつか私も、再び学校に通えるようになりたいから。

勉強だけは欠かさずやっていた。

「バカじゃないもん…。そりゃあ理解力はないかもしれないけど…バカではないもん」

そう信吾に言い返すと、信吾は私を宥めるように「はいはい」と言った。

若干、納得がいかないが、理解力がないことは認めよう。

「優菜は得意科目は?」

碧ちゃんの質問に、少し迷ってから「国語…?」と答える。

「なんで疑問系なの」

碧ちゃんが笑うのにつられて、信吾も笑う。

「だ、だって!学校行ってもないのに得意科目とか…どこのお偉いさんだよ…みたいな…」

そう言うとふたりは更に笑う。

「いいじゃない。学校行ってなくたって得意科目があるってことはいいことなんじゃないの?」

碧ちゃんが言う。

「俺もそう思うよ。まぁ、俺が教えてるわけだし?案外俺の得意科目が国語なのかもしれないけどね」

そこまで言ってひとりで笑う信吾を見て微笑む。

碧ちゃんが来てくれるようになって、私は笑い方を覚えた気がする。

それまで堅さのある笑顔しか作れなかった私に、信吾が言ったのだ。

『優菜、最近よく笑うよね』

と。

明るくなってきているのかもしれない。

空の写真は、相変わらず撮っている。

変化する空が好きで。

果てしなくどこまでも続くあの空を、自由に飛んでみたい。

そんなバカげた夢を抱いて。

部屋に飾ってある空の写真は、コルクボードがいっぱいになるほどある。

定期的に交換している空の写真。

私は、空に大きな夢を持っているのだ。

もちろん、飛べるはずのないことはわかっている。

それでも。

こんなちっぽけな自分を受け入れてくれるような、包み込んでくれるような空が好きで。

撮影を続けているんだ。

それを碧ちゃんに打ち明けたとき、『素敵だね』って、いや、碧ちゃんのほうが素敵だよって言いたくなるくらいの笑顔で感想をもらって、素直に嬉しかった。





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