あの空を自由に飛べたなら




「え?学校に行く?」

6月半ば。私は思いきって碧ちゃんに明かした。

学校に行く決意をしたことを。

もちろん、心配はされた。

「大丈夫なの?何かあった?」

遥先輩に出会ったこと、写真部に入りたいことを告げた。

「優菜…中田先輩は学校でも人気者だけど…変わり者だから誰のものでもないよ。要するに、優菜は中田先輩のことが好きなんでしょ?」

そう問われて、少し考える。

恋なんてしたことがない。

だけど、もう一度遥先輩と話したくて。

会いたくて。

そう思うと、胸がぎゅっと締めつけられた。

「これが…恋なのかな…」

そう言うと、「私からはそう見えるけど?」と返ってきた。

その直後、碧ちゃんは少し困った顔になり、声を潜めて言った。

「私も、好きな人いるし」

衝撃発言だった。

「えっ!?うそ!?そうだったの!?」

驚いて大声を出すと、「しーっ」と唇に人差し指を押しあてられた。

「ちなみに、優菜がよく知ってる人だよ」

そこまで言われて気づかないはずがない。

私がよく知る男の子なんてひとりしかいない。

「…信吾?」

「…うん」

「何で今まで隠してたの?」

拗ねてそう訊ねると、「信吾目的で来てると思われたくなかったから。優菜は親友で信吾は好きな人。別のカテゴリーなの」

そう言って渋い顔をする碧ちゃんに、私は「ありがとう」と言った。

「学校、行くから」

そう言うと、真剣な眼差しで「わかった。つらくなったらすぐ言うんだよ」と、言ってくれた。

部屋のオブジェと化している制服を見つめる。

可愛いセーラー服だと思う。

明日から、またお世話になるね。

心の中でそう言った。




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