キャッチボール
「…陽翔は、なんのために野球やってるの?」
私は、陽翔を見上げて聞く。
「…なんのため…
そんなの、考えたことなかった…」
陽翔は、うつむく。
「私がソフトボールをやる理由はね、
好きだからだよ。」
私がはっきりとそういうと、
陽翔はハッとしたように私を見つめた。
「ソフトボールが好きなの。
誰のためでもなく、自分が好きだからやるの。
伝統とか、勝ち負けとか、大事だけどさ。
やっぱり一番は、楽しいとか
好きって気持ちなんじゃないかな?」
「沙良…………」
陽翔は、何か決意したように、
私の手を強く握った。