裏切り者のお姫様 (更新中)
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ギィっと不愉快な音を立てて扉を開け屋上を覗くと、予想通り探していた男がいた。
数か月前まである少女の定位置だった場所は、その少女がいなくなってからこの男の定位置になっている。
「またここにいたのか」
「…悪い?」
「いや構わん。でも今日はもう戻るぞ。楠瀬が『駅前のケーキ買って、倉庫でみんなで食べる!』って言ってるらしいからな」
「勝手に戻って食べればいいでしょ」
「全員で食べないと意味がないって、お前のこと他の3人と探し回ってる」
「はぁ、本当に面倒な女」
目の前の男は本当に面倒くさそうにため息をつくと、座り込んでいるその場から動こうとすることもなく、背後のフェンスにカシャンと寄りかかって空を見上げた。
あの少女が俺らの傍からいなくなってからずっとこんな感じだ。ずっと真面目に受けていた授業もさぼりがちになっている。…女遊びはしていないみたいだが。
理由は何となく察しているし、この男の気持ちがすべてわかるとは言えないが、同情はする。原因は俺にもあるからなおさらだ。
「お前もいい加減切り替えろ」
「…わかってる」
「倉庫に連れて行かないと決めたのも、巻き込まないと決めたのも、…裏切り者にすることを決めたのも。…全部俺とお前が決断したことだ」
「んなことわかってんだよ!!」