相合傘
俯いて、ただ涙を流すあたしに涼君は言った。



「原因が、誰にあるかは俺でもわかるから。
だから、言いたいことはあいつに言いな」


その言葉にあたしは驚いて顔を上げた。


目の前には優しい顔をした涼君。



ただその優しい笑顔はすぐ見れなくなって、代わりに見えた後ろ姿が、だんだん遠ざかっていく。


しまいには、ドアの向こうに消えていく涼君。



結局、あたしのバッグは持ってきてもらえないまま。


どうせ、郁未あたりが持ってきてくれる…よね。


帰ろう。


今日は帰って思う存分泣いて、
明日は笑おう。



…春に直接なんて、

無理だよ…





涙を拭いて、立ち上がる。


そして、歩き出そうとしたときだった。

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