相合傘
幸せボケ
些細なことで嬉しくなるあたしは幸せボケしてるのかな?
「やっと帰ってきた」
放課後の教室。
委員会を終わらせて、教室に戻れば、
ひとり、あたしの席に座って携帯をいじっている春がいた。
その姿に、思わず顔がにやけそうになる。
「春、待っててくれたんだ」
先帰っていいって言ったのに。
「おー」
彼はそう言ってからバッグを持って立ち上がった。
「…ありがと」
「ん。帰ろうぜ」
彼はそう言って、手を差し出す。
「?」
何がしたいのかわからず、首をかしげれば、彼ははあ、とひとつため息をついた。
…何?
「手。
繋がないわけ?」
春は不思議そうな顔をして訪ねてくる。
いつもの帰りはさりげなく繋がれてた手。
それが、今日は最初から求められる。
なんだか、嬉しいようで照れるなコレ。
「…繋ぐ」
そう言って差し出された彼の右手に手を乗せれば、ぎゅっと握りしめてくれる。
「帰るか」
「うん、帰ろう」
幸せボケ
(手を繋ぐことだけであたしは幸せになれるんだ)