相合傘
変わらぬもの
「緊張する…」
繋いだ手にぎゅっと力を込めて背筋をぴんと伸ばす。
これは、やばい。
「前はよく入ってたじゃん」
「そうだけど…何年ぶりって話」
「でも母さんとはよく会ってんでしょ?」
「ここ3ヶ月会った記憶ない…」
反対、とか言われたらどうしよう…
ない…とは思うけど、やっぱり心配になる。
─ことのはじめは今日の帰り道のこと。
ずっと気になっていた相合い傘の落書きがまだ残っているのかを聞いてみたら、
「見に来る?
…てか、来て?」
と言われ、半強制的に春樹託に訪問することが決まってしまった。
そして今、玄関の前でこんな話をしている。
初めてではないというものの、やっぱり彼氏の家にあがるのは緊張する。
「開けるよ?」
「えっ」
あたしが待って、と言う前にガチャリと音をたててドアが開いてしまった。