相合傘
きっかけなんて、覚えてない。


めくるめく毎日をただ忙しく過ごしていたら、いつの間にか距離が出来てた。




結局あたしたちの仲は契約書も何もない、儚いものだったということを思い知らされた。



悲しかったし、寂しかった。




…だけどだからって、あたしには今更どうしようとかいう考えはない。





中学の時に習った、「覆水盆に返らず」という言葉があたしたちにはぴったりだ。


壊れてしまったものはもう二度と完璧には戻らない。

今更何かをしたって、もう無理なんだ。


何をしたってあたしたちの仲が元に戻るわけじゃない。



失った時があまりにも長すぎるんだ。




だったら、離れてた方が、ずっと楽だ。




…なんて、そんなこと言いながらあたしの中の春の存在はまだ大きかったりする。



頭では理解していながらも、心はそれを受け入れるのを拒否するんだ。



だけど、そんな自分に呆れながらもまあしょうがないか、と甘い自分もいる。



失った時も長いけど、一緒にいた時間も長い。


忘れられないのも仕方がないことなんだ。




そうやって、今まで自分を慰めて生きてきた。




「ねえ、聞いてる?」
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