相合傘
春って、このクラスだったのかとか、この席だったんだとか…そんな些細なことから。


あたしのことわからないのかな、なんて少し切ない気分になることまで。


まあ、高校に入ってからの二年間であたしと春は学校以外で顔を合わせたことはないし、学校で会うのだってすれ違う程度だ。



つまり、接点はゼロ。


そんなことを考えている間に春は目当てのものを見つけたのか、机を戻し、さっさと教室から出ていった。

あっという間、だった。




「あたし、あんなかっこいい彼氏欲しいなあ…」


隣の郁未はあたしの切ない想いには気づかずにしみじみとそんなことを呟いている。


知らないんだから、気付くわけもないのだけれど。



あたしが何も言わずに、ぼうっとしていると、郁未は更に続けた。


「美弥くらい可愛かったら、狙えんじゃない?

で、友達紹介してよ」


冗談とも本気ともとれるその言葉に想わず持っていたシャーペンを落としそうになる。



そんなことは、断じてありえない。


春は『幼馴染み』という立場でさえ、あたしを許さなかったんだから。


あたしを、受け入れてくれなかったんだから。


「あんな人あたしのこと眼中にないでしょ。

郁未が狙えば?」

なんとか、平静を保ち、笑顔を作った。

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