回り道でアイス
「うっ、植田君……驚かさないでよ」
水着姿の同級生は髪から水を滴らせながら金網を片手で握って立っていた。首にはタオル。そう言えばここはプールのすぐ横だったと気づく。
「それ裏門出た所のコンビニで買ったアイスだろ?広瀬サンでも買い食いとかするんだな」
「……それくらいするよ」
「だってそんなとこ見たことねーし」
「……」
図星を指されて頬がカッと熱くなった。
一応、校則で登下校時の買い食いは禁止されている。昼食をコンビニで買ってくる生徒がいる以上既に形骸化している規則だけれど、いつもそれを律儀に守っていたのも確かだった。
真面目とかお堅いとか。
自分の印象をクラスメイトに聞いたら十中八九はそういう答えが帰って来るだろう。真っ黒な長い髪をおさげに結って、成績優秀で教師の覚えもめでたい絵に書いたような図書委員。
親だとか教師だとか、そういった他人との摩擦を嫌ってとにかく波風立てないように生きてきたらこうなった。ただそれだけだ。