追憶の彼方に

✩✩波瑠の悲しみ


電話を切ってから、
自分のマンションを教えたが、
それが、良かったのかと‥‥‥‥

波瑠の辛そうな声に、
外で待たせる
考えが浮かばなかった。

玄関のブザーがなった。
私は、
「波瑠?」
と、一応、声をかけた。
「あ‥うん。」
と、波瑠。

鍵を開けて、ドアを開くと
少し、精悍になった波瑠がいた。

波瑠は、玄関で、私を見つめ‥‥‥
顔がみるみる‥‥‥‥歪んで‥‥‥
ポタポタ‥‥‥と、涙を流した。

付き合ってる間にも、見たことない
波瑠の涙に、私は立ち尽くして
いたが‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥気づくと、波瑠を抱き締ていた。

波瑠は、私を力の限り抱き締め返すと
嗚咽をあげて泣き出した。

私は、波瑠の背中をずっと擦っていた。
何が波瑠にあったのか、わからないが
今の波瑠は、あまりにも、弱々しくて
私は、離れる事が出来なかった。

しばらくすると、波瑠が‥‥
「ごめん、情けない姿を見せて。」

「波瑠、何があったの?
こんな波瑠を私は、見たことがない。
なにが、あなたを苦しめているの?」
と、訊ねる。

波瑠は、すべてを正直に話してくれた。

・自分の大学生活が、楽しくて
私を疎かにしたこと。

・奥さんの、紗良さんに嵌められて
妊娠されたこと。

・両親から、勘当されて会えないこと。

・紗良さんに、微塵の愛情もなく
抱いたのも、あの一度だけなこと。

・子供は、陽向ちゃんと言う女の子で、
可愛いこと。

・家が嫌で、仕事帰りに食事をして
自分の部屋に入り出ないこと。

・紗良さんとは、会話もないこと。

「一華を大事にしなかった罰だよな。
俺には、一華が、全てで、
一華しか、要らないのに。

一華、やっぱり、俺‥‥
    一華が、好きだ‥‥
       一華を愛してる。」
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