追憶の彼方に
俺は、朝から帝国ホテルに行き
待つことにした。
ポケットには、
一華に渡す指輪をいれて。
九時半になると
一華と一華のお母さんが、
やってきた。
俺は、
「ご無沙汰しています。」
と、一華のお母さんに挨拶すると
「波瑠、どうしたの?」
と、一華。
「えっ、あの波瑠君なの?
びっくりした、
大人の男の人になっちゃって。」
と、お母さん。
俺も、
「お母さんも、変わりませんね。」
と、言うと
「そんなことない、
すっかりおばあちゃんよ。
だけど、今日はどうしたの?」
と、言われて
「はい、一華にプロポーズに来ました。
俺が居るのに、見合いなんて‥‥‥」
と、言いながら一華を睨むと
一華は、
「ええっ‥‥」
一華のお母さんは、
「なに、そういうこと?
なんで、言わないの?
一華は。」
と、怒りながら、
友人の人と話していた。
俺は、その間、一華の手を握り
離さなかった。
一華のお母さんが戻ってきて
「改めて、家に来なさい」
と、言って帰って行った。
「一華、どうして見合いなんか
しようとしたの?」
と、俺が訊ねると
「結城課長から、聞いたの?
だって、波瑠、紗良さんと終わっても
私のとこに来てくれそうじゃなかったから。
住むところを、探すって言ってたし。
それに、知ってるでしょ
ママが、言ったことは絶対だって。」
と、言った。