私の世界に響く声
本と園田くん
カチッ カチッ カチッ カチッ
私の耳には喧騒なんて入らない。
周りに耳を傾けて何になるの。
そんなモノを聴くよりも、目の前の物語に集中した方がよっぽどまし。
本には色んな感情が含まれている。
悲しい感情、怒りの感情、喜びの感情――。
それら全てが私には面白い。
だって、みんな生き生きとしていて、見てるこっちが勇気付けられる。
そんな物語が大好き。
それに――…。
「なぁ、咲岡」
「へ? ……!」
突然、時計の秒針が刻む音しかなかった世界に【声】が聞こえた。
俯いていた顔を上げると、鼻先から3㎝程の距離に顔があった。
「あっ!」
バサバサバサっと、驚いて本を落としてしまった。
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