柴犬主任の可愛い人
 
 
兄嫁の実家のお肉は本当に美味しいのだ。飛騨牛を扱っていて、私はここでしかそれを食べたことはないし、違う牛でも美味しいけど、私は兄嫁の実家で販売するお肉がいい。


亮さんと華さんに店の名前を訊かれ宣伝しておく。通販もやってるのだ。真綾ちゃんはソーセージに夢中。主任からは、スペアリブにかぶりついて時折息をつく効果音しかしてこない、ということはお気に召してもらえたんだろう。


良かったとひと安心をする。


小学校のキャンプ以来の飯盒炊さんでのカレーは、真綾ちゃんじゃなくても惚れる。外でのカレーって最高に美味しいんだね。ルーは市販のものだけど数種を削ってブレンドしてきたらしくて、亮さん本当にありがとうございます。小学校のときのは、ご飯もカレーも焦げだらけで、しかもそれを残しちゃいけないと言われ、鼻を摘まんで飲み込んだ記憶しかない。じゃりじゃりとした食感もあったよなあ……。


野菜には目もくれずにいたら、華さんにピーマンと玉ねぎも食べなさいと、真綾ちゃんと交互にお皿に乗せられ、ちょっと大人げないと恥ずかしい。


カレーを、美味しい美味しいとがっついてたらしく、ふと気付けば私を見上げた真綾ちゃんの表情が呆然としていて。怖がらせたらヤバいと大人ぶって水をこくりと飲もうとしたら咳き込んだ。あれだ。飲むときに上を向いたら真夏の太陽が暴力的でそのせいだ。


げほげほごほごほ、と大きな咳が続き涙目でいると、初めて、真綾ちゃんが私に真っ直ぐな視線を向けてくれた。


「――あおばちゃんって、おもしろいねぇ~」


しかもスマイル付きでっ。


「真綾ちゃんっ!!」


自分の好きなものを私も喜んで食べてたのが功を奏したのかな。そこからは、仲良く一緒に食事の後片付けをしたり、そこらへんを走ったりして遊ぶ。


箱眼鏡もようやく日の目を見て、二人で川底を覗きこんだ。熱中しすぎてお尻が水に浸かってしまったけど、念のため着替え一式は持ってきてあるし、真綾ちゃんも用意があるとのことだったから、もう泳ぐ勢いではしゃぎ回ることに徹した。


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