柴犬主任の可愛い人


駄々を捏ねる柴主任をアホらしいと一蹴し、亮さんも華さんも片付けに専念してしまった。てか私に一任しないで下さいっ。


「柴主任……?」


「……だって、僕だけとても疎外感を味わいましたっ」


その訴える際の柴主任はまるで、構ってもらえずオモチャを加えて上目遣いするトイプードルのようで、やはり以前甘えたとか言ってしまった印象は間違いじゃかったと目の前のことから逃避した。小刻みに震えてたら完璧でしたよ。


聞けば、自分の親友たちと私が仲良くなるのは大歓迎なんだけど、亮さん華さんが私を青葉ちゃんと呼ぶ度に、自分のほうが先に知り合いだったのに何故神田さんなどとよそよそしいんだろう、まるで自分だけ他人みたいじゃないかと疎外感満載だったらしい。……馬鹿じゃなかろうか。あなたは上司です。


加えて、真綾ちゃんまで私に抱きつき自分に来なかったものだから、きっとどこかのネジが外れて感覚がずれてしまったんだろう。


訴え続けてくるから面倒になったのもある。別に、職場との区別をしてさえもらえれば、それでいいとした。青葉ちゃんじゃなく青葉さんなのは、残った僅かな理性の配慮かもしれないし、そんな気にすることじゃない。私だいぶ年下だけどいいのかは、この際見ないふり……。


「でもっ、私は柴主任のままですからっ」


「ええ~」


大の大人が、私より可愛らしく拗ねるんじゃないと突っぱねると、不承不承諦めてくれた。絶対柴主任は末っ子だな。


「青葉さん。交代しましょう」


「いえ。眠っちゃったしこのまま車まで行きます」


「ええ~……」


暑いし、加えて暑苦しくなってしまった柴主任から逃げるように歩き出す。主任はテントを片してればいいと思う。


一度車に戻った華さんがエアコンをかけてきたからと、真綾ちゃんを抱いた私を呼びに来てくれる。なんだか片付けもお手伝い出来ないまま、チャイルドシートに寝かせた真綾ちゃんのお守りと車番を任されてしまった。


せめてもと、運ばれてきた荷物たちの積み込みだけはさせてもらい。


いざ帰宅の途へ!!




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