柴犬主任の可愛い人
何故か柴主任の家で一夜を明かし、身体に確認せずとも何もあるわけはなかったけど、事情を知る亮さん宅に柴主任の案内で起き抜け直後に向かった。
伊呂波からすぐ近くにあった亮さんのお宅では、訪問を予想していたのか、亮さんと華さんが揃ってのお出迎え。時刻は朝の七時。真綾ちゃんがまだ寝ていると怒られた。
「亮さん!!」
「亮ちゃん!!」
渋滞に巻き込まれ、夜の八時過ぎに伊呂波に到着しても、一向に起きる気配のない私と、同じく柴主任に困ったそうだ。私の家など知るわけはないし、亮さんたちも疲れていて早く帰りたかった。――よって知ってる柴主任の家のほうに、担いで放り込んだ。のだそう。亮さんって力持ち。てか何故そこで起きない私!!
「ちゃんと部屋は分けたしなあ」
「なら私ソファで良かったのに!!」
「それはいけない。青葉さんは女の子なんだから丁重にっ」
「やだ。柴くん優しい~」
いや違う。色々皆そうじゃないけど。
「もしなんかあっても、二人とも相手はいないし大人だし、まあいっかと。な、華」
「そうよねぇ」
「いやいやよくありませんっ!!」
華さんはノリがいい人だけど、亮さんは、もっと武士的精神なお方だと思ってたけど、これからは認識を改めよう。
とりあえず何もなかったし、いやあるわけないけど、彼氏でもない男の家に一泊というショックな出来事と、昨日の疲れで重い身体を引きずり、帰ることにした。文句言ったら落ち着いたしね。
「柴主任……なんか、すみません」
「こちらこそすみません。部屋寒かったですよね。亮ちゃんの設定は低いんです。風邪はひいてないですか?」
眉を下げた柴主任に、布団は大変気持ちが良かったですとは、恥ずかしくて言わなかった。
そういえば、柴主任の家は広かったな。あれはファミリータイプだよね。オートロックだったし宅配ボックスもあったしセキュリティもちゃんとしてた。分譲だよね、あれ。邪推は、心の中に留めておいた。