柴犬主任の可愛い人
 
 
「まあ、今が元気そうならいいよ。……これからはちゃんと遊んでよね、会ってよね。にしても、相変わらず美味しそうな頬っぺたね。削がれてなくて良かった」


「もちろん。にしても、汐里のぷるぷる唇も相変わらず美味しそうでなりよりですよ。……てか、今までは本当にごめん」


「今度チョコ買ってきてくれたら許す」


汐里への詫びの品は、一時間は並んで待たないと入れないチョコレート店で。だがしかし、私に並ばないという権利はないから従うことにした。


そうだ。お詫びといえば、柴主任の分も買ってこよう。あんこ作るくらいだから食べるだろうと勝手に決めつける。真綾ちゃんたちのもだな。


美味しいものの想像はとても有意義だ。楽しくなってきて、私があんまりによによと笑うものだから、まだどこか不安げだった汐里も安心したのか、残りのビールを一気に煽った。


「今度さ、久しぶりに泊まりに来てよ」


「青葉んち会社から遠いし、どっかの土曜日に行きたい」


会わない間の隙間など感じない汐里とは、ずっとこうやって付き合っていきたい。それを自分から遠ざけようとしていたのかと、今更ながら身震いした。やっぱり、あのときは底無し沼にずぶずぶとはまってたんだなあ。


「広瀬から文句言われるだろうな、私」


「たまにはいいに決まってる。だって最近殆ど週末は一緒だったんだし」


「寂しくない?」


「それは秘密」


明らかに汐里上位な関係だけど、広瀬は絶好調に幸せそうで、汐里も、まさかこんなに続くとは思ってなかったらしいけど穏やかでいて。


少しだけ、羨ましいなと思ったことに狼狽え、いい傾向だと言い聞かせた。


もう一杯ビールを注文しようとしたところで広瀬も合流し、乾杯を仕切り直しお礼とさせていただいた。

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