柴犬主任の可愛い人
 
 
伊呂波がとても寛ぐ空間で、亮さんも華さんも大好きになって家族ぐるみのお付き合いをしてもらってお世話になって。


確かに、この伊呂波を易々と誰彼構わず紹介するのは、したほうがお店の利益に繋がるかもしれないけど……教えたくはない。


それは、だらだらというか休まる場所の確保ということもあるけど。


柴主任と、職場とはまた違った感じで接する交流だったり、はんぶんこ同盟だったり、どうでもいい話に冗談で怒ったり本気で笑ったり、大抵のことを許してくれるチョロさとか楽しくて、


それを、他の介入により損なわれてしまうのは大変惜しいと、思ってもいたりする。


柴主任も、楽しそうではあるけど、私ほどじゃないんだなと知る。だらだらが好きなのだ。だらだら……だらだら至上主義に限る!!


それにちょっと、ちょっとだけ寂しさを感じたんだけど……共感の押し売りはよろしくないから。


これは秘密だ。




そんなこんなの一日があと二時間で終わる頃、私は柴主任により自宅アパートまで送還されている。去年の師走、仕事納めの日に送ってもらってから、伊呂波で会ったときや帰宅電車が被った日は必ずそうされてて――真っ暗だと怒られるアパートまでの道のりが我慢ならないのだそう。


もういいと断っても尾行されるから、途中の交番で職質を受けないように、折れることになった。


私の水分で湿ってしまったハンカチを奪い取るのに成功し、後日綺麗にして返すことへの了承を得る。ワイシャツは……脱がせられないし、クリーニング代は断られて惨敗。そのへんをきっちりしようとすると嫌がるのだ。そんななあなあじゃ同盟崩壊していってしまうぞっ。


「それでは、おやすみなさい」


「おやすみなさい。ありがとうございました。――……柴主任」


「なんですか?」


「いえ……お気をつけて」


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