柴犬主任の可愛い人
――……
朝、目が覚める。
昨日は帰ってきた途端に身体が重くなり、迷った末にお風呂は入ってすぐベッドに潜り込んだ。
そこからの記憶がない。
「……」
朝……? って何時よ。寝たまま感じる太陽の位置だけで正確にはわからない。スマホはどうやら昨日の鞄の中らしく、取るのも面倒でそのままにした。
いいや。今日は予定ないし、明日までこうしてよう。明日は、汐里ともうひとりの大学時代の友達とパンケーキだし治さなきゃ。
一日寝て治そうと思うくらい、私の体調は昨日より悪くなっていた。明らかに高い熱、お腹も痛くて痛くて、でも下したとかそんな類いのものじゃないし。食欲もないな……これじゃあ、昨日伊呂波で帰りに持たせてもらったお料理とバースデーケーキが食べられない……。
胃がむかむかして、一度トイレに行ったらついでに吐いた。床に座り込んでしまったあとは立てなくなって、這ってキッチンまで行き、風邪薬を飲む。そこからスマホを回収してまた這ってベッドに。
もう少し寝て、それから今日やってる病院探そう。
病院好きな人はいないだろうけど、私は標準より嫌いだと自負する。けど、今日はどうやらそうも言ってられないと思いながら……
……次に目を覚ましたときには、外の景色は街灯に照らされる夜のもので、部屋は真っ暗だった。
体調は悪化をたどる一途だったらしく、全身汗だくで気持ち悪い。薬なんて効いてる気配は一切なく呼吸の間隔が短いな。心も弱って泣きそうになる。
スマホを点灯させて時間を確認すると、二十時半。
ああ。昨日、柴主任と別れた時間だなあと、送ってもらう度に毎度見送る背中を思い浮かべる。
寒いなあ、痛いよ苦しいよ……さすがに自分だけで状況の改善は見込めないかもしれない。
心細くてやってらんなくなって、頭が上手く回らないから私は、
寸前で頭に思い浮かべてしまった人に救助の電話を掛けてしまった。
明確でもないけど記憶はそこまで。
あとは、夢うつつなインターホンを鳴らす音と、這って鍵を開けに向かった先で倒れる私を抱き留めてくれた、石鹸の香り……――